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ファッションクリエイター ニュース

2025年10月1日 更新


「ファッションクリエイターという生き方」書籍のご案内

ファッションモデリストへのマニュアル

某出版社による、「作品講評」をご案内します。


『ファッションモデリストという生き方」作品講評

『ファッションクリエイターという生き方』を拝読しました。「~という仕事」ではなく「~という生き方」と題されたその表現に、著者が込めた深い含意が感じられます。
「ファッションは着飾ることではなく生き方」「ファッションモデリストの道はデザインから縫製まで服に命を吹き込む作業」「服はお客様の生き方に寄り添う友となる」「服作りは、自分らしく生きる道につながる」――。
服作りの現場作業の全てを網羅した「事典」「教科書」の随所に、四十余年にわたり斯界で著者が築いてきた人生哲学が鏤められています。本作は、著者が五年の歳月をかけて執筆したもので、一本の糸から始まり、それが唯一無二の服に仕立て上げられるまでの全工程、必要な作業や技術、留意点、デザインから縫製までを解説しています。お客様と向き合い、一枚の服を作るプロセスを、初心者から熟練者までに向けて記した解説書であり、同時に「何を大切に生きるべきか」に向き合ってきた著者の歴史でもあります。
さらに、若者が自分らしい生き方へ一歩踏み出すことを願う、力強いエールの書でもあるのです。専門性の強い作品でありながら、日々衣服と離れられない一般読者にも、「着ること」「衣服」という視点から新たな眼を啓いてくれる作品と言えるでしょう。

1986年、モノ作りにおける「利益の追求」から中国に進出した著者は、そこで日本が進む道は大量生産ではないと痛感し、オーダーメイドさらには一枚生産への道を歩み始めました。ミャンマーでは、自身が歩んできた道の誤りにも気付かされます。「日本はモノに恵まれ豊かになったが、失ったものがある。服を作る技術は人の心を豊かにすると教わり、良い製品を安く作れば、人々の心は潤うと考えてきたが、衣料の大量廃棄と低賃金を招く道につながっていた」(「はじめに」)と語ります。
環境省の2024年の統計によれば、一人当たり年間に購入する服は約20着、年間一度も着ていない服は約23着。衣服一枚当たりの価格は、1990年には6,192円だったのが、2023年には3,140円とほぼ半額になっています。この背景には、1990年代以降のファストファッションの台頭によって市場に安価な服が出回ったこと、「使い捨て」の考え方が浸透したことが挙げられます。それが私たちの思考や生き方にまで深く及んでいることが痛感させられ、著者の思想はこれに真っ向から対抗する、いわば革命的思想、生き方の大転換と言えるでしょう。

作品は、全五章20項目で構成されています。お客様のライフスタイルからデザインを描く「モデリストの原点」から始まり、縫製準備工程から裁断工程、縫製工程へと続く「ソーイング(縫製)の原点」、自分の服を創ることは生き方に向き合うことと位置づけられた「デザインの原点」、アトリエを自分らしく生きる場所とし、自分らしいライフブランドをつくることを目指す「モデリストという生き方」、そして「人と共存する生き方」の最終章へと展開します。
第15項「自分らしいライフブランドを」では、「自然の恵みは重いもの」とする著者が天然素材に拘る理由、人間の労働から生まれた知恵を継承したい思いが語られます。著者は人間の欲望が地球環境を変えってしまった事実を踏まえ、お客様と向き合って作った一枚の服が、着る人とともに生き、最後は地球の土に還るという理想のあり方を提示しています。続く第16項「私たちの服作り用語」、第17項「モデリストの基礎英単語」では、辞典的要素も盛り込まれており、本作品の大きな個性となっています。

また本作には、ミャンマーで著者が「人間は何を大切にすべきか」という問いと向き合い、著者なりに見つけた生き方・人生観が20のコラムとして綴られています。〈前向きに生きる思考〉〈自分に向き合うことで、道は見えてきます〉〈自分の力で歩く幸せ〉〈仲間と共に生きる幸せ〉〈自分の心が幸せを決めています〉〈人間は媚びない勇気は大切です〉〈私にも消費社会を変えるチャンスはある〉〈服にも心が宿る〉〈人は人、自分は自分という生き方〉〈信念があれば、心は強いものです〉――。分かり易い助言とともに、〈人として大切なこと〉では、見返りを求めないこと、他人を理解する努力は、自分を知ることと繋がるという視点が示されます

若い頃のバックパッカーの旅を人生に準えて〈自分の歩みたい道は、必ず見えてきます〉と語る著者の言葉は、読者の心に深く響きます。「第5章 人と共存する生き方」では、「まずは自分と向き合い行動すること、モデリストとして自立するには、人と比較する心を消していくことです」(p100)とアドバイスしています。 〈人生をシンプルに生きる〉では、ミャンマーでの生活を通じて感じた愛の原点、小さな生き物とともに生きる幸せ、人の見ていないところで努力すること、小さな感謝を重ねることの大切さが語られます。ファッションを通じて人間らしい心を再生させるメッセージが力強く伝えられているのです。「私は服作りを通じ、出会う人と喜怒哀楽に包まれた時を大切に、今を生きます。人生の最後まで若者へエールを贈り続けます」という掉尾の言葉は、本作の方向性を象徴するものと言えるでしょう。
(2025年9月18日「ファッションクリエイターという生き方」作品講評 )

「ファッションクリエイターという生き方」2026年4月 発売 予定

著者 水谷勝範 / 発行所 ファッションクリエイター株式会社

モデリストマニュアル 販売予定価格 ¥2600-(税別)

お問い合わせ・予約はメールにて承ります(水谷勝範)
mizutani@modeliste.net


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